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◆ GHOSTS(ゴースト) マイケル・ジャクソン(97) [映像・ショート・フィルム]

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 この記事は、2009年7月にUpしました。当時、この『Ghosts』という40分に及ぶ映像作品は、世の中にはあまり認知されていませんでしたし、MJファンの中でもどういう作品なのか知られていない感じで、この記事にはかなりの検索がされました。
 この『ゴースト』を収録したボックスセットは、1997年12月21日に限定生産品(生産数不明)として発売(定価5,049円税抜)されたため、あまり市場に出回っていません。さらに当時は、マイケル・ジャクソンに対してメディアや世の中は、常軌を逸したバッシング、誹謗中傷を行っており、かなりのファンでないと購入しなかったのではないでしょうか。
 私がこのボックスセットの発売を知ったのは、愛読書『ADLIB』で。
 特に事前告知もなくページをめくっていたらふいにこの『Ghosts』のボックスセットの商品紹介があり、「なんじゃ~これは~」って感じで、すぐに近くのCDショップにTELすると、運良く一つ入荷されていて、すぐに購入できました。
 で、作品にふれ悶絶ですよ。「マイケル、まだあなたはこんなすごいものを作れるのか」と。
 マイケルバッシングも落ち着き、マイケルの名誉も回復されていくと、この『ゴースト』に俄然注目が集まります。AMAZON等でも10万を超える値がつくほどのレア作品にもなっていました。
 そんな中、2010年6月にWOWOWがこの作品をデジタル放送するという快挙をしてくれ(おれの記事も後押しになったと思いたいっ)、多くの人もこの素晴らしい作品にふれ、マイケル・ジャクソンの素晴らしさにひれ伏すわけです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 
  (以下 original 2009.7.9 Up時分に修正・加筆)

 マイケル・ジャクソンが主演する映画として『ムーンウォーカー』が公開されましたが、その9年後の97年に『Ghosts』という作品があります。
 当初、正直な所、この作品の意図というか位置づけがよくわかりませんでした。
 というのもこの作品の制作費やクオリティーは、「スリラー」をはじめこれまでの作品と比べてもかなりのものだと思いますが、「スリラー」ほど世に知られていないと思います。40分の大作です。
 特にシングル化されていないのでMusic Video(or Promo Video)
の一環というわけでもない。
 カンヌ映画祭でも公開されたとなると映画作品としての位置づけなのか?かといって一般的な映画館で上映されていませんし。
 
 この『ゴースト』で使用されている曲は、「2 BAD」 「GHOSTS」 「Is It Scary」の3曲。
 「2 BAD」(ダラス・オースティンらが書いた曲をMJとB・Swedien、Jam&LewisがProduce)は『History』に収録されている曲。
 作品タイトルの「ゴースト」はテディ・ライリーとMJとの共作。『Dangerous』からの結びつきの強さを感じます。

 そして、「Is It Scary」は、Jam&Lewisとの製作。

Blood on the Dance Floor

Blood on the Dance Floor

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EPIC
  • 発売日: 2000/03/06
  • メディア: CD
 
 後者の2曲は、97年に発売された『Blood On The Dance Floor』に収録されています。
 これはオリジナル曲5曲と『HISTORY』のRemix集とを含んだ変則的なアルバムです。当時、突然発表されたので(もちろん超喜びましたが)驚きました。
 ジャム&ルイス作があるので『History』時に製作された曲ではないかと言われてもいました。『
ゴースト』用に新録されたものかもしれません。
 今、振り返るとマイケル・ジャクソンの周辺が落ち着いていない混乱している中での、SONYとの契約履行のためのリリースのように思います。
 タイトル曲「Blood On The Dance Floor」をProduceしたテディー・ライリーも、このアルバムリリースを知らされておらず、91年『Dangerous』時のスネアのままのリリースに不満をもらしていた。
 さて、 「ゴースト」はカンヌ映画祭でも披露され、90年代のスリラーとも評されましたが、タイトル曲の「ゴースト」がシングルカットされたわけでもなく、「スリラー」のように映像が流れまくったわけでもありません。
 国内でも、97年12月にコレクターズ・ボックスセットとして限定発売されました。

ゴースト・スペシャル・ボックス [VHS]

ゴースト・スペシャル・ボックス [VHS]

  • 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
  • メディア: VHS
 
 映像ソフトは、DVDではなくビデオテープです。(デジタル映像ではありません。画像はきれいですが)その中には、Babyface作の「On The Line」を含んだCDSも収録され(後の「Ultimate Collection」にも収録。ちょっと微妙にバージョンがちがいますが)、このCDSもこのボックスセットの価値をさらに高めた。
 さて前置きが長くなりましたが、そういう感じでMJファンは知っていると思いますが、一般的には知られていない作品。かといってこの作品はもっとたくさんの人に見てもらいたいです。

 「ゴースト」の原案は、あの著名なホラー作家のスティーブン・キング氏とマイケルによるもの。
 内容は、ある普通の村に住む普通の住人が、どこか変わった場所(お城)に住む(村人は)変人と呼ぶ主を追い出そうとする話。そのお城のマスター(主)役がマイケル・ジャクソンなのです。舞台は、お城のホールで展開されます。村長を中心に村人たちがこのお城に大挙押し寄せます。

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 そして城の主(マイケル)が彼らを出迎えます。そして、この後マスターは、城の住人(妖精?)たちを呼び覚まし、素晴らしいダンスを披露します。あと、骸骨が踊ったり、作品の中のCGは当時の最先端技術で、かなり予算をかけている作品なのがわかります。
 タイトルにもなっている「Is Is Scary」もkeyです。
 Scaryは怖がらせるという意味ですが、人は、奇妙なもの、奇異なものにもある種の恐れを抱きます。マスター(マイケル)は、いろいろな事をして人々を怖がらせます。人々は怖がりながらも、マスターのパフォーマンスに引き込まれていきます。そこに恐怖と楽しさは紙一重的なんだよってメッセージも感じます。    

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 マスターのパフォーマンスを見て、村人は魅了されます。しかし、村人を扇動する村長がそれでも彼に向かって「村から出て行け!」とまくし立てます。
 そしてマスターは「それでは行こう」と言って、自分の体を、そして顔を地面に叩きつけ、崩れて跡形もなく消えます。このシーンはある意味ショッキングです。そこにマイケルの悲痛なメッセージを感じずにはいられません。

gh6.jpggh86.jpg

 ダンスパフォーマンスのメインの曲は、実はタイトルの「ゴースト」ではなく「2 Bad」。
 ライターは、ジミー・ジャム&テリー・ルイスではありませんが、ジャム&ルイスがプロダクションにも関わった曲をマイケルが踊るというのはジャムルイFreakの私としてはちょっと感慨深い。
 またこれまでのマイケルが披露してきたDanceとは一味違うもので、ま~かっこいい。振りつけもかなり高度で大いに魅了されます。
 楽曲の「2 BAD」は『History』収録時には、そんなに注目していた曲でなかったのですが、一気に好きになりました。

 「Is It Scary」は完全にJam&Lewisとマイケルの共作。

 タイトル曲の「Ghosts」はテディ・ライリーとの共作。このリズムアレジメントはテディならでは。テディとMJの最高傑作は「Remember The Time」といわれていますが、この「ゴースト」も相当素晴らしい。Teddy Riley作品の中でも最高のクオリティーの1曲だと思います。
 (
楽曲的にはWitches MIX 5:35というレアトラックが存在します)

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 93年、少年の父親によって仕組まれた虚偽の告発で、マイケルをとりまく環境は一気に変わりました。マスコミも、それまでのおもしろおかしいゴシップレベルではなく、個人の人格や精神さえも破綻しかねない誹謗中傷をマイケルに対して行います。
 必要以上に、繰り返しこういうニュースが流れると、洗脳というかそういう見方で見てしまう所ある。私でさえ、もしかしたら何か変な事があったのかと思った事はありました。そこはほんとマスメディアの恐さ。
 しかし、一連の裁判や関係者の証言でも証明されたとおり、相手側がいかにデタラメな人間で悪意に満ちていたか、裏をとればすぐに判明する事も、メディアはセンセーショナルな部分だけをピックアップして、デタラメな情報を垂れ流し、マイケルの尊厳を傷つけ続けた。これは犯罪だよ。
 
 こうした逆境の中で、マイケルが対抗できるのは、やはり歌とダンスしかなかったわけです。それがアルバム『History』であり、この映像作品『Ghosts』ではなかったのではないかと思います。
 この作品の中でも「本当に醜い心をしているのは誰だ!」というセリフもありますし、マイケルは自分の体を粉々に砕くシーンまで我々に見せるのです。そういう悲痛なメッセージもヒシヒシとと感じる作品ですが、最高級のエンターテイメント作品として仕上げているのがさすがです。
 マイケルって演技もいけてる。少年のような笑顔も印象的。
 マイケルの映像作品としては、「スリラー」や「スムーズ・クリミナル」「BAD」等がよく流れますが、この「ゴースト」ももっと露出してほしい。
 といっても40分の物語として内容もかみしめてほしい。
 最後に驚きのオチがあるのも見逃せない。初見時、私もまったくわかりませんでした。

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◆ Somebody's Watching Me / ROCKWELL with マイケル・ジャクソン  (84) [コラボレーション]

                                               Original 2012.1.26Up

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 この「ウォッチング・ミー」はマイケル・ジャクソンがフューチャリングボーカリストとして招かれたロックウェルの全米2位(Gold Disk)の84年のヒット曲。
 ヴァン・ヘイレンの「Jump」とケニー・ロギンスの「フットルース」という84年のメガヒット曲に阻まれ1位を獲得できませんでしたが、5週に渡りベスト3をキープ、R&Bでは5週1位というかなりのヒット曲です。
 マイケルのパートは、サビの所で同じフレーズを繰り返し歌うのですが、完全にマイケルワールドがそこに展開されます。
 
 ロックウェルは、モータウンの創始者・ベリー・ゴーディJrの息子(6人いる息子の5番目らしい)で、本名はケネディー・ゴーディー。ROCKWELLの由来は、学生時代に彼が好んで演奏していたのがロックで、周囲から“いい感じだ”とよく言われていたそうで、ROCK+WELLでROCKWELLになったそう。
 ロックウェルとしてのデビューの逸話でよく出ていたのが、あえてベリー・ゴーディーの息子という事はふせてモータウンの上層部にデモテープを送り、見事に認められ20歳のデビューになったという話。
 ADLIB(音楽雑誌)で、本人のインタビュー記事を見た事あるけど、そこまで身元を隠してたって感じではなかったけど。ただ社長の息子だからってすぐにデビューさせようとはしなかったみたい。
 父親のゴーディーも親バカのスタンスでデビューさせたとも思えない。
 かといって親の七光りとマイケルが参加したというだけで、ここまでのヒットになるわけでもなく「Watching Me」をはじめデビューアルバム『ROCKWELL』(邦題:『スキャンダラスな肖像』、出てこ~い!この邦題つけた人)はなかなか唸らせる音楽性がつまっています。
 あのモータウン帝国を築いたベリー・ゴーディーのDNAを持っているのですから。
 SOUNDは、80'S系R&BのちょっとチープなシンセDance系。このロックウェルもなかなかマルチな人で、シンセやギターもこなしほとんどのSOUNDを自分で作っている感じ。

 モータウンに所属していたジャクソンファイブ時代、6歳違いのマイケルとも親交があったそう。何より彼の姉、ヘイゼル・ゴーディーは、マイケルの兄、ジャーメイン(三男)と結婚しているわけですから、マイケルとも親戚関係にもなるわけです。
 でロックウェルがマイケルにこの「Watching Me」もデモを聞いてもらうと、マイケルはすごく気に入り、ボーカル参加の申し出をしてくれたそう。
 「誰かにいつも見られている気がする」というリリックに共感したという話も。
 
 「ウォッチングミー」はSOUND的には、この頃はやったドラムマシーンとシンセSOUNDですが、ボーカルスタイルは斬新です。当時、Flow的なラッピンスタイルするアーティストはヒットチャート上ではほとんどみなかった。このロックウェルは、それをやっちゃうのです。
 で、アルバム全体もこんな感じなのかと思うと、普通に歌うバラードもあり、普通にきれいでうまい。
そのボーカルを軸に、あえて崩して歌う感じはなかなかインパクトがあります。
 マイケルをゲストボーカルに迎えなくても、そこそこヒットしたのではないかというポテンシャルです。っていうかこの曲、マイケルはバリバリに歌ってますが、あまりマイケル・ジャクソンがフューチャリングされているという認知度は薄いように思います。
 そうはいっても、『スリラー』の快進撃が続くマイケルのボーカル参加がヒットの後押しになったのも間違いない。前述したように、ロックウェルの崩したボーカルと、若干Shout気味のマイケルのボーカルは美しさと力強さを兼ね備えており、「I always feel Like Somebode's Watching Me」をひたすらリピートするだけですが、そのボーカルに魅了されます。
 SOUNDもマイケルのイメージにもあっていい感じ。合間に、MJあの息遣いや、「ヒ~、ヒ~、ヒ~」も入り、マイケルワールドが堪能できます。さらに最高のボーカル状態の80年代前半ものですから、そういう意味でも貴重な曲です。このボーカルで、85年辺りにアルバムもう1枚出してほしかった。(『BAD』以降、なんであんな強烈シャウト唱法になっちゃったのかな~)
 さらに義兄のジャーメインもボーカル参加。ジャーメインこそ、ほんの一部。エフェクトも効いたような低い声です。これは相当なジャーメインファンじゃないと聞きとれないんじゃないかな~。
 マイケルの方から「是非一緒にやろう」って言われたそうだけど、裏ではパパのベリー・ゴーディーが、かわいい息子の為にマイケルに参加をお願いした、あるいは義理の息子のジャーメインを経由してマイケルに参加を頼んだってのもあるかもな~なんて思いました。
 
 「Watching Me」は3分49秒の通常のバージョンと4分53秒のExtendedバージョンがあり、Extendedはマイケルのフューチャー部分が多いです。
 このデビューアルバムからは2ndシングル「Obscene Phones Caller」がR&B-9位(hot100-35位)になり、アルバムもHot-200で最高15位まで上昇し、ゴールドディスクにも輝きます。
 翌85年の2ndアルバム『Captured』も発売されますが(未聴)ヒットせず。それからアルバムは出ていません。今はどうしてるのでしょうね。
 まあこの「Somebody's Watching Me」は、80'SのR&Bにインパクトを与えた曲以上に、マイケル・ジャクソンのVocalが堪能できる1曲としてもかなりのおすすめです。 オレのリピート度も相当。

☆ 韓国版だそう。おれも購入しましたが、気のせいかわかりませんが、なんか音悪いんですよね。
Somebody's Watching Me (韓国盤)

Somebody's Watching Me (韓国盤)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal Music Kr
  • メディア: CD
☆ 「Watching Me」の貴重なExtendedの他、80'SのNiceなExtendedが収録されている3枚組。お奨めです!
12-Inch 80's Dance

12-Inch 80's Dance

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal UK
  • 発売日: 2006/03/14
  • メディア: CD
 

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◆アルバム 『BAD』をクインシー・ジョーンズとの関係性も絡めリズムアレンジから分析する [アルバムレビュー]

                           オリジナル2011.10.10Up 今回大幅加筆。

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 87年8月発表の『BAD』にスポットを当てたいと思います。『Thriller』の後に発売された『BAD』。全世界が注目するアルバムとなります。
 『スリラー』発売時、マイケル・ジャクソンはまだ全世界が注目するアーティストにはなっていなかったと思います。前作の『Off The Wall』の成功でR&Bのスーパースターには到達していた。
 しかし『スリラー』の世界的な売上とグラミー7部門受賞、セールスと音楽的な評価の両方の頂点を極め、まさにマイケル・ジャクソンはワールドワイドなスーパースターとなり、その新作は、USAだけでなく全世界が注目する事になります。
 そして、マイケルのライヴァルはマイケル自身でした。全世界の期待に応えなければならないというプレッシャー(という言葉では生ぬるい)と戦いながら不屈の精神で製作されたアルバムのように思います。アルバムは『BAD』は87年8月31日に全世界で解禁されます。

 今回、プロデューサーのクインシー・ジョーンズとの関係性も考えたいと思います。
 映画『WIZ』で音楽プロデューサーのクインシーと出会ったマイケル。自身のソロ作のプロデューサーとしてクインシーを迎えたいと希望するも、レコード会社やマイケルの周辺は、当時、R&BやPOPチャートでの実績が薄かったクインシーと組むことに難色を示した。しかし、マイケルは信念を貫きクインシーとアルバム制作をする事となります。 

マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス

マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス

  • 作者: ジョセフ・ヴォーゲル
  • 出版社/メーカー: ティー・オーエンタテインメント
  • 発売日: 2012/06/25
  • メディア: 大型本
『マイケル・ジャクソン-コンプリート・ワークス-』によると、この時、マイケルとクインシーは3枚のアルバムを制作するという契約を交わしたのだそうです(けっこう驚き)。その3枚が、79年『オフ・ザ・ウォール』、82年『スリラー』、87年『BAD』となるわけです。
 そして『BAD』の次のアルバムでは、クインシーとの契約はせず。91年に発表された『Dangerous』は、新たな才能テディー・ライリーを迎えるわけです。
 87年の『BAD』制作時、マイケル的にはクインシーの手を借りず自分だけで手がけたいという欲求があったかもしれません。逆に契約上、一緒に制作しなくてはならないという位だったのかも。

 2016年『オフ・ザ・ウォール』デラックスエディションが発売され、37年経ったこのアルバムが今でも高い評価を得ていることがわかりました。特に、アーティストやプロのミュージシャンの評価が高い。  
 プロデューサーのロドニー・ジャーキンスの言葉を借りれば「『オフ・ザ・ウォール』の音は、今のものより優れている。純粋な生の音だからだ」と。『オフ・ザ・ウォール』は一流のミュージシャンが集い、クインシー・ジョーンズがその才能を統率、総合演出し、見事に仕上げた作品だった。
 ロドニーの言う生の本物の音とクインシーという最高のアレンジャーが仕上げた作品だから普遍なのです。
 

 ここで、この時代の、テクノロジー、音楽機器の進化、デジタル化というものが絡んできます。まさに80年代はこのテクノロジーの進化が著しい、アナログからデジタルへと移行した転換点の時代だったとも言える。
 それこそ、一流ミュージシャンの手を借りなくとも機器がそれらの代わりを務めた。シンセサイザーは、ベース音の主流にもなり、録音技術の進化により様々なシンセ音も幾重にも重ねていくこともできた。ドラマーを呼ばなくともドラムマシーンが、様々なリズムとスネアを生み出した。その過渡期に制作されたのが82年の『スリラー』でした。
 デジタル録音で、多重録音も可能にし、サウンドに厚みもまし、様々な演出効果もうんだ。
『スリラー』は、サウンド的にはTOTO勢の功績は大きい。昔ながらのクインシー率いるミュージシャンの生演奏とテクノロジーの融合のバランスが絶妙だった。

 そして『BAD』が発売された87年という年は、デジタル元年といっていいかも。サウンドのデジタル化と録音技術はさらに進化する。音楽ソフトも、レコードからCDへとシフトしていった。
 象徴的なのが、86年のグラミーの最優秀プロデューサー、ジミー・ジャム&テリー・ルイス。彼らは、シンセサイザー、ドラム機器等を駆使し、ほぼ二人でサウンドを作り上げた。ジャネット・ジャクソンの『コントロール』さらにスケールアップした『リズム・ネイション』でその手腕が見える。
 87年の最優秀プロデューサー、ナラダ・マイケル・ウォルデンも、自身もドラマーではあるけど、テクノロジーを駆使し、ホイットニーヒューストン等に数々のヒット曲をもたらした。
 多くの一流ミュージシャンを従え作品を作り上げたクインシー・ジョーンズとは対照的なスタイルでグラミーを獲得するのです。

 『BAD』は、最新のデジタル機材が惜しむことなく投入されたアルバムであると思います。マイケルにはそれだけの財力もありました。
それにより、生楽器に関してはクインシーに口出しすることが難しいマイケルも、自身と彼のブレインでクインシーの手を借りなくとも曲を仕上げることを可能にした。
 いろいろな本を読むと、『BAD』時、クインシーとマイケルはアルバム制作においてかなり衝突したとあります。
 『スリラー』は生楽器とデジタルのバランスが絶妙だった。そこはクインシーの手腕だと思う。『BAD』もこの辺で、最新デジタルサウンドを望むマイケルと、楽器とのバランスを考えるクインシーと意見の相違をうむ。
 マイケル自身、自身の曲の明確なビジョンを描けるからそれを表現しようとする。一方、様々なジャンルの音楽を吸収している生きるレジェンド、クインシーも長年の感覚というものがある。マイケルの自立をできるだけ尊重したとも思うのだけど、不足していると思ったら、やはりマイケルにそれを伝え、補おうとした。
成長期の子の親への反発に似た部分があると思う。
 
 マイケル・ジャクソンの成長は、アルバムの自作収録曲の数から伺える部分はよく目にする。

 それぞれのアルバムでのマイケル自作曲の収録数。

 『オフ・ザ・ウォール』  → 3曲(アルバム収録曲数10)
 『スリラー』        → 4曲(アルバム収録曲数9)
 『BAD』          → 9曲(アルバム収録曲数11)
 
 クインシー・ジョーンズの自伝を読んだり、ボックスセットも購入したりしてクインシーの人間性、音楽、才能をかみしめているのですが、クインシーがとても重要な事を述べています。
 それはアレンジの重要性です。
 前述のジャム&ルイスもクインシーに、「君たちはよいライターだし才能もある。しかしブラスやストリングスのアレンジができてこそ本物だ」と助言されています。
 クインシー自身も、「自分はプロデューサーである前にアレンジャーだ」とも言っています。
 クインシーSOUNDの素晴らしさのKeyは、特にリズムアレンジにあるのではないかという事を感じます。この視点で『BAD』を見るとまた違ったものが見えてきます。
 そこにマイケルとクインシーの違い、『スリラー』と『BAD』、さらに『オフ・ザ・ウォール』の差が見えてくるように思います。(誰かのパクリじゃないよ、おれが感じた事です)

 リズム・アレンジという視点でクインシー3部作でマイケルが手掛けた曲を振り返ります。

 『オフ・ザ・ウォール』 リズムアレンジ2曲

Off the Wall (2015)

Off the Wall (2015)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Epic
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD
◆今夜ドントストップ :グレッグ・フィリゲインズ&マイケル・ジャクソン
◆ワーキン・デイアンドナイト :グレッグ・フィリゲインズ&マイケル・ジャクソン
 クインシーファミリーの、キーボーディスト、グレッグ・フィリゲインズの力をかりているけど、このグルーブ感はマイケルそのもの。特に「ワーキン・デイアンドナイト」なんて。

 『スリラー』 リズムアレンジ3曲

THRILLER

THRILLER

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EPIC
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD
◆スターティン・サムシン:クインシー&マイケル・ジャクソン
◆ビート・イット:クインシー&マイケル・ジャクソン
◆ビリージーン:マイケル・ジャクソン

 ビリージーンのリズム・アレンジがマイケル単独とはあらためての驚き。

 そして『BAD』のリズム・アレンジメントは11曲中8曲。

BAD

BAD

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EPIC
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD
 その内訳。
〈MJ&Others> 5曲
 2  The Way You Make Me Feel  マイケル単独 
 6  Another Part Of Me
 9  Dirty Diana
 10  Smooth Criminal
 11  Leave Me Alone マイケル単独
 
<Quinsy&MJ〉 3曲
 1  BAD
 3  Speed Demon
 4  Liberian Girl

 〈Quincy&Others〉 3曲
 5  Just Good Friends
 7  Man In The Mirror
 8  I Just Can't Stop Loving You

 『BAD』は11曲中、9曲がマイケル・ジャクソンの作詞・作曲ですが、Rhythm arrangementのクレジットを見ると、クインシーの力は借りずにマイケルが中心の曲(John Barnesがサポート)と、クインシーと共同の曲、クインシー主導の曲とあります。
 『BAD』制作時、マイケルはチーム・クインシーとは離れ、自宅のスタジアム(マイケルが“実験室”と読んだ)で、自分のアイデアを反映させてレコーディングできたのも、テクノロジーの進化の恩恵だと思います。

 マイケルの元である程度完成されたものが、クインシー・ジョーンズ率いるAチームの元で、プロ的なアレンジを施された感じ。結局、アルバムの11曲中、リズムアレンジにマイケルが関わらなかった曲が、「Just Good Friends」「Man In The Mirror」「I Just Can't Stop Loving You」の3曲となります。 
 大人のアレンジが、やはりチームクインシーっぽい。

 前述のようにベースはマイケル達が制作し、クインシーがアレンジを施したのが「BAD」「Speed Demon」「Liberian Girl」となる。
 ここで注目したいのが「BAD」です。
 『オフ・ザ・ウォール』の時もありましたが、初回プレス盤と後の分とではアレンジが変わっているのです。その顕著たるものが「BAD」。
 ホーンセクションの部分が後盤ではカットされているのです。初回盤では、ホーンが入ることで、グルーブ感とファンキー感が増して好きなんだけど、それが現行盤では消えている。
多分、ホーンを入れたのはクインシーのアイデアだと思うのですが、マイケルのイメージにはそぐわなかった。それで自身の主張を通し削除したものと思われます。

 そして、マイケル単独、またはブレインとともに作り上げた曲が「The Way You Make Me Feel」「Another Part Of Me」「Dirty Diana」「Smooth Criminal」「Leave Me Alone」となる。
 リズムアレンジに、クインシーの手を借りていない曲が6曲にも及ぶのです。
 やはりマイケル臭が充満した曲だと思います。
 当時、マイケルは気に入っていたスタイルの曲として「The Way You Make Me Feel」を上げている。このシャッフルグルーブは「Leave Me Alone」でも使われている。
 「Another Part Of Me」は当初、『BAD』収録が微妙だった曲みたいですが、クインシーの押しでマイケルも受け入れた。
『BAD』の中で、マイケルGroove全開なのは「Smooth Criminal」かな。

 『オフ・ザ・ウォール』『Thriller』『BAD』というクインシー3部作と呼ばれるこのアルバムの好みでその人のマイケルに向き合うスタンスがわかるかもしれません。
 最近の人たちは、ビジュアル嗜好も影響して、やはり『BAD』を好む人が多いように思います。最新のテクノロジーを駆使すると、その時にはすごいインパクトを残しますが飽きもはやい。
 『オフ・ザ・ウォール』は演出的には、派手さはないので地味に感じるのかもしれませんが、その奥深かさはすさまじいものがあります。だからミュージシャン、アーティスト嗜好の強い人はこのアルバムを好む。
 『スリラー』は、生楽器とテクノロジーのバランスが絶妙なので一番好まれるのかもしれません。
 私も、どれか選べと言われたら①スリラー②オフ・ザ・ウォール③BADの順になります。

 忘れてはいけないのが、録音に携わったエンジニアのブルース・スウェディン。『スリラー』『BAD』で最優秀録音賞を受賞しています。彼が絡むとめちゃくちゃ音がよくなります。

 クインシーがリズムアレンジに関わった曲とマイケル単独のものとは、正直な所、差があります。
 もっと突っ込んで言えば、(私の主観ですが)マイケル中心の方は割とシンプルなアレンジで深みにかける所もあるけど、マイケルのフィーリングが充満している。この感触がボーカルと融合してマイケルグルーブとなるわけで、誰もが真似できるものではない。
 マイケルがメインで手がけていない「リベリアン・ガール」や「Just Good Friends」はシングルカットせず、自分がメインで手がけた曲を優先してシングルカットしていきます。「リベリアン・ガール」はNo1シングルになれるポテンシャルをもった素晴らしい曲だったと思います。
 でもそれがクインシーからの卒業と言えばそうだと思います。
 もちろんマイケル・ジャクソンのアルバムなのだからマイケルの主張があって当然なのですが、『BAD』が、プロ中のプロが選定するグラミーで評価されなかった理由がその部分にあるのではという気もします。
 クインシーとしては、『BAD』に関しては消化不良的な部分があったかもしれません。かなりマイケルの主張を通した面があるのではないでしょうか。その不完全燃焼感を爆発させたのが、クインシーの89年のアルバム『BACK ON THE BLOCK』。
 

バック・オン・ザ・ブロック

バック・オン・ザ・ブロック

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1995/05/25
  • メディア: CD
 
 マイケルのアルバムでできなかったアイデアを投入しているように思います。
 マイケルが拒んだヒップホップ感も満載。56歳とは思えないこのCreativeさは何??
 クインシーはこのアルバムで、最優秀アルバムと最優秀プロデューサー、当時人気のヒップホッパー達が集結した「Back On The Block」は「最優秀ラップグループ」を受賞。
 このクインシーのTasteが『BAD』に加わっていたらまたちがったスタイルになっていたのかな~等とも思ってしまう。(そしてブルース・スウェディンはここでも最優秀録音賞を受賞しています)

 といっても歴代のマイケルのアルバムで『BAD』はある意味、一番マイケルらしいアルバムだと思います。音楽的にもマイケルの主張が一番つまったアルバムだと思います。
 クインシーとの3部作契約を終え、マイケルは、クインシーと離れブレインのビル・ボトレルらと次のアルバムを制作しますが、ある意味行き詰った印象を受けます。
 そこで登場したのが、強烈なビートとこれまでにないHip Hop的なリズム・アレンジメントをするテディー・ライリーを呼び寄せる事になったのは必然かもしれません。
 次作『DANGEROUS』も相当な困難の中生み出されました。
 アルバムが完成するも、マイケルはアルバムに対して確信が持てなかったといいます。そしてこのアルバムの評価を聞きたい相手が、やはりクインシーでした。マイケルから『Dangerous』を送られたクインシーが、マイケルに返した言葉、「このアルバムは傑作だ」というものでした。
 『Dangerous』の制作過程についてはまた取り上げたいと思います。 

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◆E.T. THE EXTRA-TERRESTRIAL ☆ ET Story Book ☆  - マイケルの感動的なナレーションが聞けるアルバム- [企画もの、アイテム]

                                          2011.12.3Up

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 日本では、『E.T. Story Book』という言い方をされますが正式名称は『E.T. The Extra-Terrestrial』。これは、スピルバーグ監督のあの有名な作品『E.T.』(82)の物語をナレーションで収録した作品で、そのストーリーテラーを担当したのがマイケル・ジャクソンだったのです。
 クインシーの自叙伝を読むと、事の発端はワーナーBrosの役員を通じて、クインシーとスピルバーグが接点をもった事による。2人はすぐに意気投合したと言います。当時、スピルバーグは『ET』を撮影中。クインシーも『スリラー』のレコーディングにとりかかった頃でした。
 映画の天才と音楽の天才は、やはりお互いに何かを感じあうんでしょう。2人は自然と「研修しあおう」という事になり、スピルバーグは、クインシーを映画のセットに招待し、クインシーは、スピルバーグをレコーディングスタジオに招待したと言います。

 こういう出会いってお互いの感性をさらに高めあうんだろうな~。
 
 そして82年6月、全米で『ET』が公開され、当時の興行収入の最高記録を樹立する中、クインシーは、スピルバーグから『ET』の世界観を音楽で表現してほしいという依頼を受けるのです。
 快諾したクインシーが用意したのが、腹心のライター、ロッド・テンパートンによる美しいバラード「Someone In The Dark」。ロッドは、「Rock With You」「Thriller」のライターでもあります。
 そしてそれを歌うのはマイケル以外にいないでしょう。ロッドもETの世界観もイメージしつつ、マイケルのボーカルのイメージtの融合も考えたに違いない。
 レコーディングを終え、その仕上がりに感動したスピルバーグは、さらにクインシーとマイケルに1枚のナレーション形式のアルバム制作の依頼をするのです。

 当時『スリラー』の製作も遅れている中、クインシーはこのプロジェクトにチャレンジする事にします。何よりマイケルが『ET』に感動し、この世界を表現できることを望んだのです。
 当初から、スピルバーグもこのストーリーブックのナレーターはマイケル意外に考えられないと思っていたそうです。
 スピルバーグをして、「マイケルみたいな人に出会ったことはない」と。そしてマイケルの事を「彼はスターだけど心は純粋無垢のままだ。そして自分の人生を完全にコントロールしている」と評しています。スピルバーグは、後にマイケルを主役にした『ピーターパン』の実写版を企画しますが、実現せず。当初、マイケルが演じるはずだったピーターパンは、ロビン・ウィィアムズが務め『フック』として91年に上映されます。

 
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 このストーリーブックは、前述のテーマソング「Someone In The Dark」がオープニングとエンディングで流れます(リリックも違う)。そして本編が、30分に渡る聞かせ物語で、ナレーターがマイケル・ジャクソンなのです。
 もちろん映像はありません。
 バックにはジョン・ウィリアムズによるスコアや、効果音、ETやCastの声も流れますが、進行はあくまでもマイケルのナレーションです。
 実際に作品を見たマイケルは、1回目は、「何もかも溶けて消えた」と語り、「2回目は狂ったように泣いた」と述べています。マイケルは完全にETの物語と一体化しています。マイケルは、喜び、驚き、悲しみ、怒り、すべての感情をナレーションに込めて表現します。そこには躍動感あるマイケルがいます。歌ともDanceともちがう。ナレーションだけでもこの表現力。
 
 実は、私、未だに『E.T.』見ていません。(USJのETのしょぼいアトラクションは体感しました!)さらに英語もそんなにできるわけではありません。しかし、マイケルのナレーションで聞いた『E.T.』でほぼ内容を感じる事ができました。
 クインシーは、このアルバムの製作に6週間を費やします。アナログ時代の当時、製作はかなり大変だったようです。さらにCBSからは『スリラー』の完成を急ぐよう言われている中での製作だったのです。ある意味賭けだったっとも述べています。
 しかし、クインシーとマイケルはやり遂げます。そしてその努力は、最高の結果となって返ってきます。
 それは、グラミー賞で最優秀児童用レコードを受賞するのです。マイケルは受賞スピーチで「今まで頂いたグラミーの中で一番うれしい」と述べます。

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 「子供の無邪気さは想像力の種だ。子供はいろいろな事を我々に教えてくれる」と彼は言います。
 マイケルの発言には、子供のもつ神秘性を言及するものが多い。普通の幼少時代をもつことができなかった彼は、子供を通じて失われたものを見出そうとしているのかもしれない。
 この受賞と『スリラー』での7部門の受賞とあわせ、1回のグラミーで8部門を受賞するという前人未到の記録も作るのです。記録という観点では、ETのアルバムを製作していなければこの記録は作れなかった。
 
 「Someone In The Dark」(邦題:暗がりに隠れている君)は当初、シングル化も予定されていました。マイケルのVocalがとても美しく、そして、とてつもなく優しい。しかし、この曲がシングル化される事はありませんでした。そもそもこのアルバム自体が、CBSとMCA(ユニバーサルのレコード部門)の間で訴訟問題となり、法廷闘争の末、販売停止となるのです。
 CBSの主張は、MCA側が当初の取り決めを破り『E.T. The Extra-Terrestrial』を『スリラー』の発売直前に発売した事でセールスの支障をきたすというものでした。
 裁判所はエピックの主張を認めます。それにより『ET Story Book』は、50万枚が出荷された後、販売停止となります。
 日本盤は、当初販売されていないと思っていましたが発売されていました。当時はもちろんネット等なく探す手段は電話か自分の足です。私もあちこちのレコード屋を探したけど見つけることができなかった。後に輸入盤を購入していましたが、最近、ネットで日本盤を見つけ購入できました。(今でもネットでで見つける事ができるのではないかと思います)ただ違いは、日本語訳のブックレットがついているかどうかで、マイケルファン的な視点では違いはないです。
 マイケルコレクター的には、この記事にも使用しているマイケルとETの2ショット、56cm×56cmのポスターは貴重かもしれません。

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 この作品が、今公式に発売されていないのは残念でなりません。クインシーも、自叙伝で「ユニバーサルが、黒人アーティストのマイケル・ジャクソンを軽視してEpic側にきちんとした筋を通さなかった」と述べています。
 映画業界が、音楽業界を軽視した部分もあったのかもしれません。今でも、映画業界関係者は、自分たちの方が格的には"上"という意識を感じる。
 この問題で、クインシーとスピルバーグも一時期絶交状態になったといいます(後に和解し、絆はさらに深まったそうですが。その証拠にスピルバーグ監督の『カラーパープル』のサントラをクインシー担当)。ただ両レコード会社が、きちんと話をし調整していれば、この作品が販売停止になる事もなく、後にCD化もされたかもしれません。両者のスタンスが、自社の利益ではなく、我々リスナーに向かっていたならここまでもめる事もなかったでしょう。
 
 この『E.T. The Extra-Terrestrial』を聞いているとマイケルがそこにいるようです。
 今でもUSAでは中古のレコードは売られているようです。「Someone In The Dark」は永年コレクターズアイテム的な曲でしたが、現在『Uitimate Collection』や『スリラー』のボーナストラックとしても聞けるのはうれしい。でもこの曲以上に、マイケルの30分に及ぶナレーションは、歌やDanceとは違う感動を我々に与えてくれます。マイケル亡き今、その感動はさらに深まります。


☆ Someone In The Dark収録

Ultimate Collection (W/Dvd) (Spkg)

Ultimate Collection (W/Dvd) (Spkg)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Epic
  • 発売日: 2004/11/16
  • メディア: CD



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◆ もし『BAD』が『BAD』でなかったら★ 『BAD』25周年記念盤・完全未発表曲を聞いて ★ [アルバムレビュー]

                             オリジナル2013.5.26Up

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 『スリラー』が前人未到のセールスを記録し、その『スリラー』を超えるべく、マイケルがニュー・アルバムの製作に着手したのが85年だそうです。そのまだ輪郭の見えないニューアルバムのために、62曲もの曲をストックしていたといいます。
 前回、MJがなぜ『BAD』のスタイルにたどり着いたのか、推察してみました。
 同級生のプリンスとも比較しましたが、プリンスもこの頃Creativeなパワーが全開です。
 マイケルは、5年という歳月を1枚のアルバムに凝縮させた。対照的にプリンスは毎年のようにアルバムを発表した。しかし、そのアルバムはどれも違うカラーをもち、楽曲の良さとサウンドの質の高さとそのcreativeさに、多くのリスナーが魅了された。
 マイケルも、毎年とはいわないまでも、2年に1枚くらい出せる楽曲はそろっていた。
 前述の62曲から絞りに絞って、33曲の楽曲はある程度完成されたデモ盤まで出来上がっていたたようで、そこからの6曲がこの25周年記念盤のボーナストラックとして収録された模様。
 “タフなMJ”というコンセプトに沿って、アルバムタイトルも『BAD』となり、収録される曲が選ばれた。最終的にたどり着いた『BAD』のスタイルも、素晴らしいものですが、『BAD』25周年記念盤のボーナストラック、これらの未発表の6曲を聞いて、80年代後半にもう1枚、アルバムを出してほしかったという思いを強く持ちました。
 
 やはりそう望むのは、人間マイケルの内面を表現した作品を聞いてみたかったという欲求と、そのボーカルを感じたかったという思いです。
 マイケルのボーカルは、80年代と90年代でも明らかに違う。80年代でも前半と後半でも違いを感じます。その理由は、年齢によるものと別の要素があるように感じています。
 80年代前半、『オフ・ザ・ウォール』、『スリラー』の頃のボーカルはMJの生涯においても最高のボーカル力です。どうしてもあの天才的なDANCEのインパクトが強くて、ボーカルの魅力については二の次になるのですが、マイケル・ジャクソンはボーカルも唯一無二の声なのです。
 「それはなぜなのか?」
 あらためて考えましたが、マイケルのボーカルは、性別を超えた魅力があります。
 男性ボーカリストでありながら、女性的な美しさと繊細さも兼ね備える。
 男性的な力強さと激しさもある。そして黒人特有のソウルさも秘める。
 さらにボーカルにリズムが宿る。
 両性具有的なボーカルの質に、情感の豊かさとリズムがのる。ここまでのボーカルを兼ね備えるアーティストを知らない。
 
 『オフ・ザ・ウォール』は、そのボーカルに焦点をあててみると、最高級です。そして、そのボーカルを活かすサウンドを持ち合わせていたクインシー・ジョーンズと出会ってくれた事は最高です。
 クインシー・ジョーンズも70年代後半から80年代前半は、これまで吸収してきたジャズだけではない様々なスタイルが見事に融合され、最高級のミュージシャンやレコーディングスタッフ、最高の機材にも恵まれ最高のサウンドを生み出していた。そんな環境で、最高のフューチャリング・ボーカリストとしてマイケルを迎えれたのは最高だったでしょう。
 そしてロッド・テンパートンの曲とマイケルのボーカルの相性は最高です。ロッドも、マイケルのボーカルの質、スタイルも考えて曲を作ったといいますから。
 
 マイケルのボーカルについて書いてるとどんどん長くなるので、このテーマは次回にして、『BAD』とは違うスタイルのアルバムについてのテーマにもどります。
 『BAD』は、そのテーマからして、ボーカルも攻撃的です。
 極端に言うと、『BAD』では笑顔で歌うマイケルがあまり浮かんできません。恋愛ソングの「The Way You Make Me Feel」もシャウト色も強め攻撃的です。攻撃的という一言ではくくれない、かっこいいボーカルと言った方がいいのかな。
 「リベリアン・ガール」は繊細なボーカルです。「マン・イン・ザ・ミラー」はこれまでになかったパワフルなボーカルです。
 リズム感を出すためか、喉を鳴らす感じのスタイルも、この頃から頻回です。
 この頃からそういうボーカルスタイルに完全に変貌したのかと思っていましたが、この未発表曲を聞くと、すごくリラックスした、ナチュラルなボーカルのマイケルがそこにいたのです。これはけっこう驚きました。
 
 そして、リリックです。マイケル・ジャクソンの、一人の青年の胸のうちがそこにあるのです。
 マイケルのパーソナルな心情を表現したアルバムとして95年の『ヒストリー』があります。ただこのアルバムは、ほんとMJの限界に達した怒りや苦しみを爆発させたもの。これが本来のMJの内面なのかと問われれば、そうとは答えれない。MJは愛の人なのだから。こんなに怒りや苦悩に満ちた人ではない。あのアルバムは、マイケルがメディアの理不尽で容赦ない攻撃に立ち向かわなければ、自身の精神が破たんしかねない、そこまで追い込まれた状況で製作されたアルバムだと思います。
 そしてこのアルバムで4曲を手がけたメインプロデューサーが、ジミー・ジャム&テリー・ルイスです。パーソナルな心情を曲やアルバムとして表現することのできるプロデューサーとして彼らの右に出るものはいないでしょう。
 ジャム&ルイスは、もちろん最高の楽曲と最高のSOUNDをマイケルとともに生み出します。
 「スクリーム」は、ジャム&ルイスworksの中でも最高級の1曲。「Tabloid Junkie」「History」、どの曲も素晴らしいクオリティーです。他にも、『HISTORY』には収録されませんでしたが、ジャム&ルイスとは他にも数曲製作したようです。
 ただし、ジャム&ルイスとの曲に、彼らも得意とするところの繊細なLOVEソングはありません。この時期のマイケルの内面を表現するからこういうテーマの楽曲になったと思います。
 もし、『BAD』製作期の86年から88年辺りで、ジャム&ルイスをプロデューサーに招いていたら、クインシー作品とはちがった歴史的な名盤が出来ていたと思います。しかし、この時期にマイケルとジャム&ルイスが組んでいたら、ジャネットの『コントロール』か『リズム・ネイション』は生まれなかったかもという話にもなりますが。
 ジャム&ルイスがこの時期のマイケルとアルバム製作をしていたら、『ヒストリー』ほどメディアを攻撃したり、苦悩を吐露する作品にはならなかったはず。
 そこには、前人未到の領域に到達した、スーパースターの孤独、自由への憧れ、ピュアなラブソングや、平和や子供をテーマにした作品ももっともりこまれたはず。
 これらのテーマを90年代のマイケルに求めることは難しい。地球の癒しと子供の救いはテーマになりましたが、マイケルの内面は閉ざされます。ある意味、そこにマイケルの絶望感を感じます。
 しかし、今回の80年代中盤から後半に制作されたと思われる『BAD』のアウトテイク曲は、とてもマイケルの内面を感じる事のできる楽曲です。
 
 『BAD』25周年記念盤に収録された完全未発表曲の6曲を振り返ります。収録曲順と前後します。

「Don’t Be Messin’ Round」

 サルサ調のグルーブが心地いい。MJのこういうタイプの曲は始めて聞きました。「スターティン・サムシン」もサンバのグルーブが最高ですが、マイケルはわりと曲としては単調でも、グルーブ感のある曲を好むのを感じる。
 「The Way You Make Me Feel」もメロディーラインの起伏は少なく、わりとシンプルで単調だけど、分厚い重低音グルーブとシャッフルビートが心地よく、サウンド面の肉付けで曲としての魅力が増しているのを感じる。
 この「Don’t Be Messin’ Round」も、デモ曲とはいえ相当完成しているけど、さらに完全な形で仕上げたらさらに素晴らしい楽曲になっていたに違いない。

「Song Groove」

 タイトルは、「ソング・グルーブ」ですが、原題は「Abortion Papers」(中絶許可証)。
 曲としては、80'S的なグルーブ感のある心地いい曲で、こういった曲でマイケルのボーカルの魅力も映える。
 その曲調とは裏腹に曲のテーマは深く、シリアス。
 キリスト教の国では、すごくナイーブなテーマである妊娠中絶。マイケルがこのようなテーマの曲を作っていたというのも驚きです。
 ライナーノーツでもこの曲の訳は割愛されてて、内容はよくわからなかったのですが、ネットをあさってたら、明確な訳がのっててすごく理解できた。(yomodariteさんの『読書日記と着物あれこれ』(kumaさん訳)から引用させて頂きました)

僕が歌ってることを聞いて、みんな何と言うだろう

僕の心の中を見て、心が燃えるように痛むんだ
君はどう思う  君は何て言う
愛はどうなってしまうんだ、僕の感じる罪の意識が分かるかい

命はどうなるんだ
僕なら自分の子供が欲しい

 キリスト教は、基本妊娠中絶を禁止していますが、妊娠中絶には、それぞれのケースで深刻で複雑な事情があると思います。
 この曲をアルバムに収録していたら相当な議論を生んだでしょう。マイケル自身も、何らかの事情で中絶を受けた女性を傷つける内容にしてはいけないと、熟慮して書き上げたそうですが。
 子供を愛するマイケル・ジャクソン、こういう側面の曲を書いていたというのも驚きでした。

「Al Capone」

 これまでもちょこちょこ取り上げていますが、「Smooth Criminal」の元曲となった曲だそうです。 
 私も、そうとうMJの曲を聞きこんでいますが、この曲と「スムーズ・クリミナル」がすぐに結びつきませんでした。
 スムクリよりもすぐに浮かんだのが、ジャーメインとの「Tell Me I’m Not Dreamin」です。
 この曲は、兄ジャーメインのアルバムでマイケル・オマーティアンが製作した曲で、彼のリズムアレンジとシンセグルーブが冴えわたる楽曲ですが、MJがこの曲にこんなにもインスピレーションを得ていたとは驚きでした。
 この感じでそのまま出してたら、ジャーメインやオマーティアンから相当の反発をくらったはず。
 しかし、そこからさらにエッジ感を際立たせ、メロディーもよりキャッチャーになり、「スムーズ・クリミナル」が誕生したんですね。この曲との出会いも驚きでした。

 「Price Of Frame」

この曲も、スーパースターとなったマイケル・ジャクソンらしい楽曲。

それが有名税ってやつさ

名声の対価を支払わなきゃ
苦痛だなんて思っちゃだめさ
有名税なんだから
これが名声の代償
泣き事言ってちゃ駄目なんだ

 リズム・アレンジもこってて、このダークな雰囲気はマイケルっぽい。
 メディアをテーマにした曲です。『BAD』にも「Leave Me Alone」(ほっといてくれ)という、初めてメディアに対してのダイレクトなメッセージソングを収録しました。ショートフィルムでも、エレファントマンと一緒にダンスをしたり皮肉もまじえてのものでした。
 この曲のリリックも、まだMJの気持ちに余裕を感じます。
 メディアも、いろいろネタにはしたけどまだ越えてはいけないラインは守っていたように思います。
 しかし、90年代、特に93年のあの事件以降、MJに対する扱いは、スターとはいえ、個人の人格や人権など無視した、理不尽で、不当で、偽りにまみれた容赦ないものになります。
 そしてあの心優しいマイケルも、そういったメディアの攻撃に、ついに反撃するのです。
 マイケル・ジャクソンほど、人間の二面性をその身で感じた人はいなかったのではないでしょうか。それは善としての、愛に満ち溢れた、思いやりや慈悲の心のある素晴らしい人たちの心。
 その一方で、汚れた、悪意ある、虚栄心に満ち溢れ、身勝手な人たちの心もその身をもって感じたに違いない。

 そして最後にとりあげるこの2曲は、とても感動的でした。
 「I’m So Blue」とそのものズバリ「Free」です。

「 I’m So Blue」

 こういうマイケルの内面を感じるようなラブソングって実は意外となかった。
 そしてボーカルもとてもナチュラルです。
 
 僕は本当に一人ぼっち
 とても寂しく、孤独だ

 彼らに言われたんだ
 気分が沈んだ時にこそ
 ハッピーな歌を歌うべきだって
 だから僕はずっと ずっと長い間 歌っているよ
 だけど それでも 涙が止まらないんだ
 教えてほしい 僕はどうしたらいいんだろう
 
 すごく切ないリリック
 そしてこう結びます
 
 だから僕は歌うんだ
 どうしようもなく 泣きながら

 僕を自由にしておくれよ
 僕を解き放って

そして「Free」です。
この曲もとてもナチュラルなマイケルがいます。
 
 自由になりたい
 吹き抜ける風のように 自由に
 スズメのように 飛んでゆく
 この髪が 風になびくのを感じて
 どこへ行くにも 自分のタイミングで

 僕は 僕のものなのだろうか
 
 多くのファンや、ファミリーの愛に包まれていても、マイケルの孤独感はマイケルしか知りようがありません。「僕は僕のものなのだろうか」、優しいメロディーとともにその言葉が心に残る
 
 あとマイケルは、とても詩的な曲も書きます。誰かをイメージしているのかもしれませんが、一人の少女を主人公にした曲もある(スージーであったり、アニーであったり)。
 そんな中でも印象的なのが後に『Ultimate Collection』に収録された「Scared Of The Moon」。月に対する神秘さと畏れを曲にした。この曲にもマイケルの内面を強く感じる。
 最終的に、姉・リビーに提供された「Fly Away」も美しいスロー。
 
 こうして、これらの『BAD』の収録が見送られた曲に触れると、『BAD』とはちがった、一人の青年・等身大のマイケル・ジャクソンを表現したアルバムの可能性も感じれた。
 もちろん『BAD』を否定する気はありません。当時、どれだけ『BAD』に夢中になったか。『BAD』の楽曲、1曲1曲の完成された世界観は、製作されたショート・フィルムとともに素晴らしいものです。
 そして1曲1曲どれも世界観が違う。これほど1曲1曲が、たしかな世界観をもった楽曲がおさめられたアルバムはないように思います。
 それでも、80年代後半にもう1枚、マイケル・ジャクソンのソロアルバムを聞きたかったと、この未発表曲を聞いて思ったのでした。
 『BAD』25周年記念盤、ウェンブリーでのLIVEも素晴らしいですが、これらの未発表曲に触れれたことも幸福でした。
(『BAD』25周年記念盤、こうして未発表曲にもリリックと訳(西寺郷太氏)も載りすごく丁寧でゴージャスなブックレットで感謝です)

BAD25周年記念デラックス・エディション(完全生産限定盤)(DVD付)

BAD25周年記念デラックス・エディション(完全生産限定盤)(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2012/09/19
  • メディア: CD

 

Ultimate Collection (W/Dvd) (Spkg)

Ultimate Collection (W/Dvd) (Spkg)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Epic
  • 発売日: 2004/11/16
  • メディア: CD
 
マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス

マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス

  • 作者: ジョセフ・ヴォーゲル
  • 出版社/メーカー: ティー・オーエンタテインメント
  • 発売日: 2012/06/25
  • メディア: 大型本




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